2012年9月4日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.8
中国ではお正月を春節と呼び、旧暦(太陰暦、中国語では「農歴」という)で祝うことはよく知られている。その他にも多くの伝統行事を旧暦で祝う。なかには誕生日も旧暦で祝う人がいるので要注意だ。私も以前、暦を見たら義母の旧暦の誕生日が過ぎていて大いに反省したことがある。今年は閏年で、四月が二回あった。西暦との距離感を特に感じる一年だ。旧暦の8月15日は中秋節、今年は9月30日である。 日本でも中秋の名月や十五夜と呼ばれて親しまれている。ちなみに、道教に由来する中元(7月15日)とは別物だ。この中秋節の一ヶ月程前になると、老舗の菓子屋はもちろんのこと、ホテルやレストランなどがこぞって独自の”月餅”を売り出す。日本では月餅に季節感はないかもしれないが、中国では正にこの中秋節に食べるものなのだ。そして、日本のお中元と同様に、お世話になっている人への贈り物として月餅の大箱が中国全土で飛び交う。月餅は、バラ売りで一個数元の自宅向けのものから、数個入りで一箱500元を超える贈答用まで、多種多様だ。10年前は餡の種類が少なく味も素朴過ぎて、梅屋のシュークリームや、壺屋のケーキで育った私に合うものは皆無だった。しかしここ数年は各社が競って商品開発と研究を重ねてきたようで、買ってもでも食べてみたいと思える商品が出てきた。昨年はハーゲンダッツやスターバックスの月餅が値段も高く個性を発揮していた。今年は井村屋(の現地法人)までもが、カステラと月餅の贈答用セットを販売していた。以前、ホステルに宿泊中のお客様や北京在住の友人たちを招いて、「月餅食べ比べ品評会」なるものを企画したことがある。製造元や餡の味をいろいろ集めて順位をつけた。 抹茶味や珈琲味、ティラミス味やクリームチーズ味は良かったが、蟹ミソ味のような意図不明のものもあり、時代を感じつつ皆で楽しんだ。 最近は時間に余裕がなく(館内でのイベントは企画していないが)、中秋節には月餅を、端午節にはチマキをフロントで配っている。また春節は毎年餃子を茹でて振る舞い、一番大きなテレビをロビーに運んで春節晩会(中国晩の紅白歌合戦のようなもの)を流す。 うちのホステルは外国人よりも中国系のお客様が多い。実家で大家族と過ごすことが望ましいとされる伝統的な祭日に、北京で、しかもうちのような全室シャワー&トイレ共同の半地下ホステルで過ごしてくださるお客様に、ご縁と感謝を感じないではいられない。(おわり)