2:「富裕層」という言葉

2012年6月12日発行 あさひかわ新聞「北京あれこれ」No.2

日本で「中国の富裕層向け」という言葉をよく聞く。観光PRや物販その他、あらゆる中国ビジネス関係者たちの重要キーワードになっているようだ。米のコンサルティング会社・マッキンゼーが2009年の報告書で富裕層の世帯年収を25万元(約325万円)以上と定義した。この金額が後に日本行き個人旅行ビザ発給の対象基準となり、年収25万元イコール富裕層を印象付けた。しかしその数年前に、テレビのトーク番組でアナウンサーが「年収5万元から50万元が中間層である」と断言していたのを覚えている。なんと層の厚い中間層であろうと驚いた記憶が鮮明に残っている。 公称10%前後(実質2〜3割と実感)で増える給与水準と生活物価を踏まえると、2012年の今現在、富裕層と呼べるのは、年収100万(1300万円)以上、資産1000万元(1億3000万円)以上が最低ラインだ。富裕層の他に「裕福な中間層」というくくりもある。これまでに団体の訪日旅行に参加して日本の品物を買い漁った人はおそらくこの層に含まれる。富裕層と呼ばれる人々は団体旅行を避け、友人や家族だけで勝手気ままな旅行を楽しんでいる。日本人が漠然と富裕層と呼んで想像しているのは、実際にはこの「裕福な中間層」なのではないかと思う。富裕層の行動パターンは、富に縁のない私の想像を超える。2005年に「ピカソは1枚欲しかった。 3000万円までなら買うつもりだった」と予算の3分の2、2000万円でお安く(?)落札した北京で会社を営む三十代の女性の発言は衝撃だった。 富裕層の年収や資産は、我々の理解を超えたスピードで膨張してゆく。彼らをターゲットにするつもりなら、その嗜好や特異性を真剣に研究すべきだ。彼らは「特別」「唯一」「独自」「最高級」「自由」「勝手気まま」などの言葉で表現されることが多い。ただしそれぞれが強い個性と感性を持つようで、十把一絡げには定義しにくい層だ。 北海道の恵まれた自然が、彼らを引きつける魅力を持っているのは確かだ。しかし、彼らを満足させ、”惜しみなく消費してもらう”ためには、さらに周到な配慮が必要だ。日本人のサービスレベルとホスピタリティ、技術と知恵を存分に生かす必要がある。 「富裕層の皆さん来てください」とただ繰り返すのでは、話にならない。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。 刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住18年、中国在住22年。