99:中国の大学入学試験「高考」

2017年6月13日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.99
 今年も「高考(Gaokao)」の季節がやってきた。
 今年は六月七日からの二日間(地域によっては三日間)、特別な時間が流れる。夕刊紙「法制晩報」によると、今年北京市内で高考を受けるのは六万人。九十二カ所の試験会場が設定されたそうだ。
 高校生が脇目も振らず毎晩深夜まで勉強する真剣な姿を見ると、頼もしさよりも悲哀を感じる。なぜなら、留学という選択肢が持てない家庭では、高得点を取って名門大学に入学することが、一生を変える唯一の突破口だと信じられているからだ。だから高考は、本人だけのものではなく、家族にとっても最重要なのだ。
 試験会場周辺の交通整理、付近での騒音やクラクションの禁止など、まち全体どころか国を挙げて受験生に配慮する。かつて遅刻しそうな受験生を送るために信号無視したタクシー運転手がいたが、許される空気だった。とにかくこの期間は、無関係の市民ですら、受験生のために協力するのが当然だ、という雰囲気に呑(の)まれる。
 そんな国民的な重要試験で、絶対にあってはならないのが不正だ。しかし、これまでも試験問題が漏洩したり、替え玉受験という問題が起こってきた。そしてIT時代のいま、ハイテク機器を駆使した不正が行われる危険性が高まっている。
 主催者側も必死だ。北京では、試験問題が印刷工場から試験会場に輸送するまでGPSで位置と状況を監視し、公安や武装警察が警備する。試験問題の保管室には死角なく監視カメラが設置され、二十四時間体制で当直がつく。さらに夜間の抜き打ち検査、電話による担当者への勤務確認なども行われる。
 ほかにも、試験会場に入る際の顔認証と指紋認証、静脈認証、無線用隠しイヤホン探索機、電波遮断機、無線電波測定車などが配備されたという。全会場でこれらすべてが運用されたとは思えないが、市民に「不正防止にこれほど真剣」との印象を与えることはできただろう。
 不正根絶の決意と実行力は想像を超えている。試験期間中は会場内だけでなく、周辺の電波までも遮断してしまった。試験初日の夕方、私の携帯電話にも「試験期間中は無線電波遮断機が起動しているため、通話やインターネットに支障が見られる。試験終了後は速やかに回復するのでご理解を」とお詫びのショートメッセージが届いた。電話会社にクレームを言う市民がいても、高考対応だと知ると「それなら仕方あるまい」とすぐに納得するはずだ。受験生という“子ども”への理解と期待、その懐の深さが、いかにも中国的だと思う。

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住。