93:「長期休業」の報に触れて

2016年12月13日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.93

今月二日、札幌の知人から「長期休業入り」の見出しで始まる優佳良織工芸館と国際染織美術館に関する紙面の写真が送られてきた。記事によると優佳良織工芸館の開館は一九八〇年、当時の記憶は曖昧だが、台場の方に凄いものができたと聞いた気がする。浪人時代、友達と工芸館前の斜面の草の上で座っておにぎりを食べたこともあった。 当時はまだ雪の美術館もなく、旭川の街並みが一望できたことや、周囲にたくさんの人が行き来していたこと、草の上でくつろぐ人が他にもいたことを覚えている。工芸館に知人がいた母はプレゼントで頂いた優佳良織の小物をいくつか所有していた。サンゴソウがテーマの赤いマフラーを見せられたとき、これが旭川で作れるのかと驚いた記憶もある。 二〇〇九年に夫からホステル経営を相続した私は、二〇一一年に故郷との関わりを求めてフロント横の客室を事務所として登記し、北海道とりわけ旭川の紹介を始めた。 こちらでも旭山が有名になると「旭川は動物園の他に何がある?」と聞かれることが多くなり、まずは「雪の美術館を見て」と返答した。 そうして雪の美術館を訪れた人は(除雪を知らない人たちに共通する)幻想的で神秘的な冬のイメージを体感できたことを喜び「内部がこれほど大きいとは思わなかった」と驚いていた。しかし優佳良織や染織美術については、その分野に詳しい人や、旭川の文化の歴史を知りたい人でなければ、興味を持ちにくかったのかもしれない。美しい風景や良質な伏流水といった自然環境だけでなく、世界一流の木工技術や、市民生活に溶け込む音楽や文学を支え受け継ぐ旭川の人々のこと、そして「北海道伝統美術工芸村」のことをもっともっと広めたかったが、私はあまりに微力だった。紙面には「長期休業」とあったが、このままで良いのか。  事情はどうあれ、外部からすると、旭川市民が誇れる文化であり、旭川市の重要な観光資源のひとつ、ひいては市民の財産に他ならない。地元の有力者や市民のリーダーの誰かが、立ち上がり声を上げることを願わずにはいられない。保全や保護を求める「市民運動」が起きたときはその活動に参加したいと強く願う。私一人は微力でも、市民の願いが集結すれば大きな力になるはずだ。「民間だから」と誰も何もしない場合、自然を搾取することが目的のブローカーや、最初から転売が目的の投資家、悪意の第三者の手に落ちる可能性とその結末が心配でならない。(おわり)

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住。