10:反日デモと暴動

2012年10月2日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.10

9月11日の尖閣国有化を受けて中国全土の100ヶ所以上で大小様々な反日デモ活動が行われ、一部は暴徒となった。 私は15日から17日かけて広州に行っていた。市内では道路封鎖が行われていたし、日系コンビニやスーパーの前には警備員が立っていた。 北京に戻ると、報道の通り、大使館周辺や付近のレストラン街はデモや警備、交通規制で混乱していた。  ジャスコでは日本食材コーナーが韓国製品に替わっただけで、通常営業をしている(26日現在、日本食材は販売を再開していた)。  青島のジャスコの割られた窓ガラスや、炎を上げる本田車販売店の写真がネットに投稿されているのを見たが、北京でそこまでの暴動は到底考えられない。  大連ではデモの発生すらなかったそうだ。  しかし山西省の平遥へ行った友人は、(チェックインにはパスポートが必要なため、日本人であることを伏せることができず)すべての宿で宿泊拒否に遭い、怖い思いをして慌てて(北京に)戻ったそうだ。  地域によって状況に違いがあるのが中国らしい。 一部には官製デモだという見方もあるが、それは(北京においては)あり得ない。日本よりも政治家の層も厚く人材も情報も豊富な中国共産党の中央執行部が、(いくらヤラセが得意だとしても)デモ隊を組織して外交カードに使おうなどという安易でリスキーな手段をこの場で選ぶはずがない。 ペットボトルや生卵などを配布したり、政府系の人間が紛れ込んでいたことは考えられるが、デモ隊に交渉可能なリーダーがいなかったからこそ、コントロールに手を焼き、(中国政府から)会社への通達や(個人への)携帯メッセージで広くデモ参加への自粛を呼びかけることまでしたのだと思う。 私の周辺の中国人にはデモの暴動を批判する人が多く、(私や子どもたちの)安否確認や注意喚起の連絡が相次いだ(何年も連絡が途絶えた親戚や、カナダに移住した夫の幼馴染から国際電話までかかってきたのには驚いた)。 新浪微博(中国版ツイッター)には、「医療や就労や住居等すべてに満足して他に問題がなく、本当に暇な人は(暇つぶしに)デモに参加すれば良い」という皮肉もあった。  南京大虐殺を否定する声がある日本に対し、戦後処理への不満があり、記憶として侵略被害経験のある中国で、庶民に対日不信感が根強く残ることは否定しない。 また、日本の反中デモの映像や中華系学校への放火騒ぎの報道を受けて「いま日本に行ったら日本人に殴られる」と心配して、訪日旅行を取りやめる人が相次ぐ現状からも、日本が理解されていないことが窺える。 そのような中で、(売国奴呼ばわりされるリスクもあるのに、敢えてこの時期に)「日本人は親切。嫌な思いは一切していない」と発信を続けている在日中国人たちがいる。我々平民は、そういう身近にいる中国人との相互理解を深め、共感できる絆を草の根でつくるしかないのかもしれない。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。 刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住18年、中国在住22年。