19:塞翁が馬

2013年2月26日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.19

2月13日から北海道に帰省している。でも実家の旭川でゴロゴロしている時間はない。帰国の翌日、すぐに札幌に向かった。今回も出来る限り多くの関係者に会ってネットワークを広げること、また冬の北海道観光の醍醐味を可能な限り自分で見て体験しながら発信することが目的だ。

2週間の帰省中、4日間は中国のプロカメラマンに同行し、札幌から旭川、網走と観光視察する計画だった。18日の夕方、札幌から旭川に入った。カメラマンは旭川駅の木壁にたくさんの名前が彫られていることに驚いた。私はこの名前プロジェクトのことを説明しながら駅を出た。

夕食は駅から近いラーメン店「山頭火」だ。旭川に来てもらったらラーメン、これは私の鉄則だ。注文を終えたところで、名前プロジェクトの正しい情報を伝えようと思いiPadを取り出そうと鞄を開けた。そこで気づいた。さっき降りた列車にiPadを忘れてきたことを。

今回の帰省直前に購入したばかりのiPadには、今後のスケジュールがぎっしり記録されている。iPhoneは画面が小さすぎるので、その利便性を満喫し始めたばかりだった。

私はカメラマンに事情を説明しながらうろたえた。手元のiPhoneは中国携帯で日本では受信専用にしか使えなていなかったため、お店の方に最寄りの公衆電話の場所を尋ねた。すると「公衆電話は近くにはないから」とお店の電話を使うように勧めてくれたうえ、JRの忘れ物係につないでから受話器を渡してくれた。焦りながらJRの担当者に事情を話したところ、特徴などを確認され、それが届いていると告げられた。小躍りしそうなくらいに嬉しかった。ほっとしてラーメンをしっかり味わうことができた。

ラーメンを食べ終えると駅に向かった。私が忘れ物窓口で受け取る様子、受取表に署名する様子などをカメラマンに撮影してもらい、すぐに中国版ツイッター「微博(weibo)」で発信してもらった。言葉の違う外国人が旅行中に忘れ物をしたら大変ですよ、そんなメッセージのつもりだった。

すると予想以上に転送やコメントが続々と寄せられた。1日経ったところで、転送が百件、コメントは22件になった。その多くが、日本の安全性や道徳観を讃えるもので、日本旅行中に携帯電話や財布など貴重品を紛失したが、手元に戻ってきて感動した体験を書き込む人が続いた。

地元に戻って油断してしまったことを、ラーメンをすすりながら反省していたが、この”事件”が日本の治安の良さやモラルの高さを宣伝する思わぬ機会になった。人間万事塞翁が馬だ。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。

18:賑やかな春節

2013年2月11日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.18

今年の春節(旧暦の正月「大年初一」とも言う)は2月10日だ。大晦日に当たる前日の9日は「除夕」と言う。中国の年越しは、日本のように厳かでなく、爆竹をはじめ大小様々な花火で盛大に祝う。花火は年々改良されて豪華になり、奇抜なものが売られている。中にはまるで照明弾のような派手な花火もある。

14年前、初めての春節は当時暮らしていた河北省で迎えた。まだ生後数ヶ月だった長男が、やっと夜にぐっすり眠ってくれるようになった頃だった。除夕の午後から爆竹の音が聞こえはじめ、夜中の12時を過ぎる頃から急に激しくなり、道新花火大会のような花火が至るところで上がった(注:日本ように主催者がいて会場や点火場所やが固定されているのではなく、市民がそれぞれ自宅近くの空き地で好き勝手に花火を上げるのだ)。それからほぼ2週間、15日後の元宵節まで、窓ガラスが割れんばかりの爆竹の音が絶え間なく響いた。どこでも熟睡できる私が、あまりの爆音に寝不足の日々を過ごした。

2002年に北京に移ってからも、春節前には夫の親兄弟の残る河北省に家族全員で帰るのがルールだった。2008年からは、家族の事情や帰省するスタッフの穴埋めのため、私は北京に残ることにした。宿でスタッフやお客様と一緒に餃子を作って食べ、ロビーにテレビを設置して、「春晩」と呼ばれる紅白歌合戦のような番組を流す。

充満する火薬の匂い、機関銃のような音と振動、その臨場感は、事故や火災の不安も手伝って、まるで戦場のようでもあるが、新年を祝う希望に満ちたお祭りだ。たいていの日本人客は「こんなの日本ではあり得ない、すごい」と歓声を上げる。

1993年から2005年まで、北京市中心部での爆竹花火は安全面への配慮から全面禁止とされた。しかし、復活を望む声が多く、時間と場所を制限して(つまり、夜12時以前と環状5号線の内側はダメ)解禁になった経緯があるが、やはり規模は全体として縮小傾向にある。

春節には北京に住む外地人が田舎に帰り、一時的に北京の人口が減る。加えて去年は、春節期間中の海外旅行ブームが起こり、北京人の数が減った。今年も春節の海外旅行は好調らしい。

この状況に、連日の大気汚染警報が追い打ちをかけている。「爆竹や花火は空気を汚染するから禁止すべきだ」という意見も出てきた。縮小どころか、再び禁止になるかもしれない。

「春節の爆竹と花火を見たいから、毎年中国へ来る」と楽しみにしている人もいる。なんといっても中国の伝統文化だ。廃れてしまうのは残念でならない。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。