17:北京の大気汚染

2013年1月29日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.17

 

一月に入って北京の大気汚染警報が頻発している。 そもそも10年前だって、視界が白くなることはよくあった。乾燥しがちな冬は特に多く発生し、夜は空中の浮流物がライトに照らされ、全体的にぼんやりと明るくなって、まるで幻の中を歩くような感覚にさえなる。 当時の人々は、「大霧(濃霧)」と呼んでいた。大きな川も海もない乾燥した地域で、霧がどうやって発生するのだろうと最初は疑問に感じた。日本からの出張者に「これは何ですか?」と聞かれて「霧です」と答えたところ、「(霧じゃなくて)スモッグですよね」と言われて返事に窮したことがある。「もしやこれが?」とは思っても、確かめる手段はなかったのだ。 そんな私もそのうちに慣れてしまい、冬はこうゆうものなのだと違和感を持たなくなってしまった。それというのも、14年前に住んだ河北省石家庄市(大気の質は全国最低レベル)に比べたら、格段にマシだったのだ。 2008年の北京オリンピック開催決定の頃から、大気汚染防止等の環境保全への取り組みが目立つようになった。北京市内の大規模工場は郊外や他の街への移転を余儀なくされた。五輪期間中はナンバープレートの偶数奇数によって運転して良い日が制限される条例も導入された。五輪終了後も週に1日、特定の曜日の運転が禁止されている。 現在は自動車のナンバープレートそのものが、平均75倍の抽選に当選しなければ取得できず、新車の購入は実質制限されている。政府は力ずくで環境保全に取り組んでいる。 いつの頃からか、新聞で「大霧」と「スモッグ」が使い分けられるようになった。さらに昨年夏の大洪水以来、気象予報では警報が出るとメディア(テレビ、新聞、ラジオ、ネット)を使って速やかに周知されるようになった。かつて光化学スモッグのために「青空が無い」といわれた東京も復活した。 北京もきっと克服できるはずだ。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。

16:中国のマスメディア

2013年1月15日付け あさひかわ新聞 北京あれこれNo.16

中国に来たことがない人の中には、中国のマスメディアは人民日報と中国中央テレビくらいしかない、と思っている人がいるかもしれない。言論の自由がないのだからマスコミに書かれていることは政府のプロパガンダばかりだろうとか、中国人民は皆、政府発表の情報を鵜呑みにしているだろう、と思う人もいるかもしれない。 私が初めて中国に来たのは1997年で、住み始めたのは翌年だ。当時は中国語が全く解らなかったから新聞を読むことはなかったが、夫の実家にはいつも数種類の新聞があったし、テレビのチャンネルの多さに驚いた記憶がある。 現在北京で良く目にする新聞は、新京報(公称発行部数73万部)、京華時報(83万部)、北京青年報(60万部)などの報道系の朝刊紙のほか、北京晩報(120万部)や法制晩報(60万部)などの夕刊紙もある。 週二回発行でページの多さが際立つ精品購物指南(30万部)は消費世代に人気で、高級ブランドの広告や不動産の広告が多い。他にも文学、経済、軍事などの専門誌と、新聞販売店の窓口には多種多様の新聞が並ぶ。人民日報(300万部)が中央政府の宣伝紙であるという認識は普遍的なようで、「書かれている真実は日付だけだ」と言う人も珍しくない。テレビは、有線で年間百数十元(二千円前後)の視聴料が必要だが、中央テレビ系のチャンネルが15あるほか、各地域でもそれぞれチャンネルを持っている。  例えば北京では北京テレビ台のチャンネルが10あり、他に区ごとのチャンネルもある。他の省や都市も独自のチャンネルがあり、ざっと百数十チャンネルにもなる。 業者を通せば別料金で海外テレビも視聴できる。ネットテレビを導入した我が家では、日本の関東局と関西局、BSも視聴でき、時間さえあれば日本よりもテレビライフを楽しむことができる。 ところが現代のモバイル世代の若者は、新聞やテレビよりもPCやスマートフォンから欲しい情報だけを取り出しているそうだ。溢れる情報の中から、自分に必要な情報を選択し、自分なりのコメントや評価をつける。 その情報はさらに広がってゆく。新聞やテレビから一方的に情報を与えられた時代が終わり、インターネットの普及により誰でも情報源になったり、世論を動かす可能性をもちうる時代になった。 重要なのは、マスコミやインターネット上の情報を鵜呑みにしないということだ。報道には意図的なもの、間違い、一方的一面的なものがあるということを認識しなければならない。新聞に書いてあることを、そのまま真実だと思い込む体質の人は、むしろ日本人の方が多いように思う。(おわり)

(おことわり)すべての内容は、当時の個人的な感想です。刻々と状況が変わる北京では、過去の情報は思い出にすぎません。現在の状況とは異なる場合が多いことを予めご了解ください。