134:新型コロナウイルスで非常事態(4)

2020年3月3日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.134

 恐れていたことが現実になった。ついに北海道各地で、そして旭川でも感染者が出てしまった。道内でも市中感染が広がっているようだ。

 つい半月前、緊急支援を決めた日本政府や自治体、日本人有志に対し、中国人は心から感動し、感謝と尊敬の念を抱いていた。「日本は礼儀正しく秩序がある社会、中国とは雲泥の差」「日本万歳」くらいに言っていた人たちが、今では「日本の政府って、もしかして中国以下?」「中国政府は権限があるが、日本政府には能力も権限もないようだ」と言い放つ。そして、今では日本と韓国が「感染地」として、入境者は隔離、監視対象となった。まるっきりの立場逆転だ。

 旭川で最初の感染者が「とんかつ井泉」という店名を公表したことは、日本国内のみならず、日本のニュースを注視している中国人の間で高い評価を得た。札幌や函館市長の会見が全国ネット(つまり海外でも)放映される中、いまのところ西川市長の会見を見ていないのが残念だが、井泉のおかげで、旭川の知名度と旭川市民への好感度は着実に高まったと言えるだろう。

 そして鈴木知事が公立小中学校の休校と「責任は私が負う」と宣言したことで「やっと日本にもリーダーらしいリーダーが出てきた」と称賛されている。鈴木知事の経歴や若かりし頃の写真まで飛び交うほどだ。鼻が高くなったり低くなったりで忙しい。

 今後の方向性は大きく二つある。一方はこれまで通り個人の自由や権利を守りつつ、既存のルールに従い、政府からの指導や指示を待って対応するもの。民主主義らしく、手順を踏んで慎重に動くというものなので、一見リスクは少ないように見える。

 もう一方は、緊急かつ高度な政治判断を理由に、個人の自由や権利を侵害することになっても、目前の危険排除を最優先するものだ。例えば中国のように、街を封鎖し、市内は通行制限、民間企業も通勤禁止、学生は自宅学習、病院と生活物資やインフラを維持し、行政と警察は市民の生活と安全を守る盾になる、とか…。

 この荒療治は「自分は関係ない」と思っている人からの抵抗を抑えなければならないため、信念とともに強い権力が必要だ。当然、財政面でのサポートも必要になるので、困窮している財政をさらに圧迫させることになる。やり過ぎだと非難を受けて失脚、悪名を残す可能性もあるから、誰もやりたくない。習近平主席だってやりたかったとは思えない。しかし、手を緩めてしまうと、効果は減少し時間も余計にかかりかねない。

 昨夜、道南に住む友人から電話があった。私にマスクを送った数日後に発熱しはじめて、もう十日になるという。病院に行ってもコロナの検査ができず、出勤できる状態でもないので、やむなく自宅で個室に篭って解熱剤で対処しているそうだ。体力はもちろん、気力を持たせるのが大変らしい。苦しそうな声に胸が詰まった。

 コロナの難点は、知らない間に感染し、無意識下で感染拡大に加担しまうことだ。今や地球上で絶対安全な場所も人もいない。「文化や経済の維持発展は重要ですが、市民の皆さんの命と健康はもっと大切です。市内から重篤者や死者を一人も出さないために、あらゆる手段を取るつもりです。全責任は私が引き受けますから、どうか私に力を貸してください」と言えるリーダーと、信じて従う市民の両方が必要なのだと思う。いま、日本の民主主義が問われている。

(緊急報告・終わり)

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住18年、中国在住22年。