91:中国人の旅行動向

2016年10月10日 あさひかわ新聞 北京あれこれNo.91
 国慶節休暇(十月一日から七日までの七連休)の旅行動向が発表された。今年はのべ六億人、つまり中国人の二人に一人が国内外の旅行に行くという史上最大の規模だそうだ。
 近年は旅行プランのオーダーメイド、また個人で現地を訪ねてイベントに参加するなど新たな形態が人気を集めていて、昨年に比べて三~四倍と目覚ましい伸びを見せている。
 もっとも旅行熱の高い都市は上海で、次が北京、以下成都、広州、深センと続く。上海と北京は旅行をする人が飛び抜けて多かった。確かにこの数日間、北京の街中は車も人影も少なかった。
 上海人、北京人が国内旅行に掛ける平均額は五千元(約八万円)。ちなみにJTBよると、今年のGWの日本国内平均額は三万五千円だ。
 一方、国外旅行の平均費用は八千元(約十二万円)で、買物中心から体験型に変化しつつある。具体的には、ホテルのランクを上げたり、高級料理や現地の特産を味わうなどだ。かつては安いパッケージ旅行で爆買いするツアーが主流だったが、今では八割が買物設定なしのツアーを選ぶようになった。またホテルは四つ星、五つ星の予約が全体の四五%を占め、古城に泊まるのも人気だった。
 国外には六百万人が出掛け、やはり史上最多となった。各国が中国人旅行客を招き入れようとビザ政策を緩和したため、五十七の国家と地区でノービザ等の待遇となったことも追い風になった。人気の国は韓国、タイ、日本の順だった。
 発表から読み取れるのは、日本のメディアが言うほど中国経済が失速し、破綻に向かっているわけではなく、お金の使い方が変わってきたということだ。政府高官が公金を湯水のごとく使える時代は終わり、接待も減ったのは事実で、その影響は確かに出ている。しかし、それは一部の特権階級の話だ。日本でバブルが崩壊したあとのように、全国民が夢から覚めたような状態には至っていない。国民の生活水準が向上し続け、給与所得も物価も上昇している現状は、熱狂的加速から緩やかな安定成長に入ったと認識するのが妥当だ。
 爆買いが減った一番の原因は、中国人旅行客が冷静になったからだろう。旅行中に大量の荷物を持ち歩く不便さにうんざりし、貴重な旅行時間を有効に使い始めたのだ。アマゾンや楽天など合法的な個人輸入が浸透しつつあることも背景にある。
 でも本当に欲しいものは、探すのに時間もかけるし、金に糸目をつけずに買う。中国経済も中国人も、日本の物差しでは計り切れないスケールと奥深さを持っている。(おわり)

投稿者:

nanben

北海道旭川市出身、北京在住。